光のもとでⅠ
「……ローズヒップティー?」
「そう、美容にいいのよ? ビタミンCたっぷり補充!」
 ビタミンは肌にいいから……?
 髪の毛が乾くと、
「湊の言いつけひとつ破っちゃったから、もうひとつはちゃんと守らなくちゃね」
「……一時間起きたら一時間休む……?」
「そう。少し横になりなさい」
 手を取られ部屋へ連れていかれる。
 ベッドに横になると、
「ちょっと待っててね」
 と、栞さんは部屋から出ていった。
 戻ってきた手にはアロマライトが握られていた。
「オレンジスイートとフランキンセンスのブレンド。ゆっくり休みなさい」
 と、アロマライトをコンセントに差し込んで部屋を出ていった。
 トップノートのオレンジとベースノートのフランキンセンス。オレンジは夜眠る前によく炊いてくれる安眠効果のある精油。フランキンセンスはストレスや不安、心に働きかける精油だ……。
 何も訊かないでくれるけど、すごく労わられてる。それくらい心配をかけているのだろう。
 私はアロマとの相性がとてもいいらしく、香りに意識を集中していると、知らないうちに眠りに落ちていた。
 そうだ、何も考えずに眠ってしまいたい。
 そういう気持ちが拍車をかけたのかもしれなかった。
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