光のもとでⅠ

40

 挨拶が終わると、藤守さんはすぐに秋斗さんの家をあとにした。
 また秋斗さんとふたりだけの空間になる、
 人がひとりいなくなっただけ。
 さっきと同じ状態に戻っただけなのに、私は緊張していた。
 緊張からか喉がひどく渇いた気がして、冷めてしまったハーブティーに手を伸ばし一口含んだ。
 口に爽やかなミントティーが広がると、清涼感は少しの緊張を助長する。
 聞こえるはずがない。部屋に響くわけがない。
 心臓の音が聞こえるほど秋斗さんの近くにいるわけでもない。
 わかっていても心臓の鼓動がとても大きく感じられて、秋斗さんに聞こえてしまうのではないかと不安に思う。
 すると、斜め上から声が降ってきた。
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