光のもとでⅠ
 家から大学までは蒼兄が一緒。
 駐車場から大学へ抜け、ツカサと待ち合わせしている私道入り口まで蒼兄はついてきてくれた。
 待ち合わせの場所が近づいてきて、すでにツカサが到着していることに気づく。
 けれど、ツカサは私たちに気づいていなかった。
 それは数メートルという距離になっても変わらず、遠くを見ていたツカサはため息をついて足元に視線を落とす。
「何? ため息なんかついて。遅刻、はしてないよな?」
 蒼兄が腕時計を確認する。
 時計はまだ一時を指してはいない。
「あぁ、少し考えごとしてました。何考えているんだかわかりかねる年寄りが身内にいるもので」
 私と蒼兄は意味がわからず顔を見合わせる。
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