光のもとでⅠ
 ただただ、視界の端に認めていただけ。
 居心地の悪い雰囲気はどうしたら打破できるのか……。
 そう思って視線が地面に落ちたとき、
「この藤棚の話、前にしたっけ?」
「え?」
 気づいたときには秋斗さんが隣に立っていた。
「藤棚が五角形になっているでしょ?」
 見るように、と言うかのように指で示され、今は葉が黄色く変化している藤棚を見上げた。
「これはさ、俺たちが生まれるたびにじーさんとばーさんが一本ずつ植樹してくれたんだ。で、最終的には五人で五本、五角形。一定の背丈で剪定してあるからもう高さの差はないけど、植えられたばかりの藤の木はとても小さくてかわいかったんだよ」
 秋斗さんの話に想像を膨らませる。
 藤の木の苗の頃とはいったいどんなだろう。
 まだ木が若く柔らかく、葉も小さいのだろうか。
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