光のもとでⅠ
 どうしよう……。
 歩きながらならまだよかった。
 こうやって向き合ってお話をするのはなんだかとってもハードルが高い。
 テーブルに置かれたグラスをじっと見ていたら、クスクス、と秋斗さんが笑いだした。
 不思議に思って視線を向けると、秋斗さんは私を見て笑っていた。
「秋斗さん……?」
「ううん、正直だな、と思って。でも、そんなに困らなくていいよ。一緒にいること、もっと楽に考えて? 話題提供ならこと欠かさないよ? もう一年以上前の話だけど、この席で蒼樹とお茶してたときに蒼樹の彼女っていう女の子が現れてね、俺、初めて修羅場に同席しちゃったよ」
 と、私の知らない蒼兄の話を始めてくれた。
 一通りその話が済むと、
「翠葉ちゃん、俺なら、翠葉ちゃんが困るようなことはしない」
 秋斗さんが何を言おうとしているのかはわかった気がした。
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