光のもとでⅠ
 私はロッカーを開けコートを取り出す。
 ポケット部分を確認するように触れたけど、思っていたような感触は得られない。
 コートの生地は形を変えてふにゃりと折れた。
「え……?」
 一瞬にして頭が真っ白になった。
 いつもなら制服のポケットに携帯を入れてからコートを着る。
 でも、今日は携帯を忘れそうになったのを蒼兄に指摘され、出かけ間際にコートのポケットに入れたのだ。
 マンションのエレベーターの中でサイレントモードにセットして、教室に着いたらコートを脱いでロッカーへ入れた。
 携帯を取り出すことはすっかり忘れていた。
 だから、あるはずなのだ。コートのポケットに。
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