光のもとでⅠ
「どうして、ないの……?」
 私は信じられない気持ちを抑え、今度はポケットに手を入れる。
 けれども、やっぱり携帯は入っていなかった。
 ロッカーの中に落ちていないかも調べてみたけれど、それらしきものは見当たらなかった。
 焦りを覚えた私は、再度制服のポケットに手を入れる。
 もうないことを確認し終わっているにも関わらず、私は席に戻りかばんをひっくり返した。
 思いつく場所はすべて探した。
 でも、どこを探してもない。
 携帯が、ストラップが、とんぼ玉が、鍵が、ない――。
「落ち着こう……落ち着かなくちゃ――」
 私は椅子に座ってかばんに荷物を詰め始めた。
 ひとつひとつきれいに入れることで気持ちを落ち着けようとした。
 落ち着こうと思うのに、心臓はドクドクと鼓動を速め、気は急くばかり。
< 7,483 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop