光のもとでⅠ
「……か、み?」
 靴を傾けると白い紙が三つ折にたたまれていた。
 開くと、「お話したいことがあります。放課後、池のほとりで待っています」ときれいな女性らしい字で書かれていた。
「……なんで今日――」
 どうしてこのタイミングなの?
 最近、こういった呼び出しはなかったのに……。
 そこまで考えて、はた我に返る。
 ……違う。
 このタイミングだからこの手紙なの……?
 中学では物がなくなることなんて珍しくなかった。
 でも、高校に入ってからは物がなくなることだけはなかった。
 私はメモ用紙に視線を戻し、じっと見つめる。
 宛名も差出人の名前もない。
 ただ、話したいことがある、とだけ書かれている。
 確信も確証もない、ただの勘。
 私は桜香苑に向かって歩きだした。
 逸る気持ちを抑え、走り出したい気持ちを抑えて。
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