光のもとでⅠ
「呼び出しにひとりで応じるというのは本当なのね」
 声の発し方? それとも話し方?
 誰かに似ていると思うのに、その「誰か」が出てこない。
 じっとその人を見ていると、その手に自分の携帯が握られていることに気づく。
 訊くまでもなかった。
「携帯を返してください」
「これ? 私、拾ったのよ? 感謝してほしいわ」
 その人は携帯ディスプレイを表示させてはクスクスと笑う。
「……落としてはいないと思います」
 ずっとコートに入れてあったはずなのだから、落としようがない。
「あらやだ……では、どうして私が持っているのかしら? まさか、私が盗ったなんて仰らないわよね?」
 にこりと口元に笑みを浮かべる。艶然とした笑みを。
 その口端の上がり方に思い出す。
 雅さんに似ている、と。
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