光のもとでⅠ
 顔や声ではない。話し方や仕草が似ていると感じる。
「あなた、どういうつもりなのかしら」
「何がですか?」
「何が? ずいぶんととぼけていらっしゃるのね」
 どういうつもりなのか、とだけ問われてもなんの話なのかさっぱりわからない。
 とにかく携帯を返してほしかった。
「携帯を返してください」
 私の言葉には返事をせず、その人は話し続ける。
「拾ったときにね、誰のものか調べなくてはいけないでしょう? それで少し中を見せていただいたの。そしたら、指が滑ってしまって着信履歴が表示されたわ」
 クスリと笑い、
「驚いたわ。パスワードも何もかけていないなんて。そんな携帯に、まさか藤宮の方々の番号がこんなにたくさん入っているだなんて」
 す、と身体中の血が引く。
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