光のもとでⅠ
 パンっ――。
「きゃぁっっっ」
 音と叫び声が辺りに響き、自分の右手に衝撃が走る。
 叩いたのだ。
 思い切り、彼女の頬を。自分の利き手で。
「手を上げるなんて野蛮なっ」
 何を言われても怖くもなんともなかった。
 あるのは憤りだけ。
「野蛮で結構よ……」
 自分の声は驚くほどに冷ややかだった。
「私、人にされて嫌だと思ったことはしない主義なの。――本当は、本当はっ、あなたの携帯を同じように池に落としてやりたかったっっっ」
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