光のもとでⅠ
「もう十一月下旬なんだ。そんな薄着でいるな。コートは着ないと意味がない」
「なっ――」
 手の甲で涙を拭うと、目に真っ白なシャツが映った。
 どうしてシャツ……?
 はっ、と我に返ったときには遅かった。
 バシャンッ――。
 水しぶきを立ててツカサが池に入った。 
 背にかけられたのはツカサの上着だったのだ。
「ツカサっ、いいっっっ。自分で探すからっっっ」
 ツカサは池の中で静かに振り返る。
「翠の目は節穴か?」
「え……?」
「俺が入ってこの深さなんだ。翠が入ったらどうなるか想像してみろ」
 私が入ったら……?
 よくよく見ると、水が――池の水がツカサの首まであった。
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