光のもとでⅠ
 つまり、一般のプールよりも深いということ。
 学校の池なんてそんなに深くないと思っていた。
 池を覗き込んだことだって何度もある。
 でも、そんなに深いとは感じなかった。
 球技大会の罰ゲームに池の底掃除があるくらいだから、そんなに深いわけがないと思っていた。
「それ、ちゃんと羽織ってくれないか?」
 私が手に持ち直した上着を見て言う。
 戸惑う私に、「早く」といつもより低い声で催促した。
「お嬢さま、羽織られたほうがよろしいかと思います」
 背後に控えていた警備員さんに上着を取られ、背にかけなおされる。
「これだけ持ってて」
 ツカサは普段外すことのないメガネを外し、池の縁に置いた。
 その一拍あとには姿を消す。
 池に潜ったのだ。
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