光のもとでⅠ
 コクリと頷くと、
「それは司もちゃんとわかってると思う。そのとんぼ玉、いつも大切そうに髪につけてたもんね」
「…………」
「大丈夫、こっちは俺たちに任せて」
 久先輩は周りの警備員さんたちに、「後片付けお願いします」と礼をして駆け出した。
 気づいたときにはことの元凶、髪の長い女生徒はいなかった。
「翠葉ちゃん、帰ろう」
 秋斗さんに言われ、「はい」と答えるものの、どうしてか動けない。
 秋斗さんは私の背にかけられていた三人分の上着を手に取ると、警備員さんのひとりに声をかけた。
「これ、三人に届けてもらえる?」
「かしこまりました」
 背を覆うものがなくなると、冷気が全身を包み込む。
 身体がゾクリと泡立つほどに気温は落ちていた。
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