光のもとでⅠ
「落ち着きなさい。ここにあるから」
 お母さんが立ち上がると、ベッドの足元にあるデスクの上からふたつの携帯を持ってきた。
 ……ふたつ?
 どちらも同じ機種。
 ただ、ひとつにはストラップがついていて、ひとつにはストラップがついていない。
 それだけの差。
「こっちが今日池に落ちた携帯」
 そう言って渡されたのは、ストラップが付いているほうの携帯だった。
「そしてこっちは――このくらい言ってもいいわよね?」
 お母さんは誰に訊くでもなく、宙を見ながら口にした。
「こっちは唯が保護してくれていた、本当の、もとからある翠葉の携帯よ」
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