光のもとでⅠ
 お母さんは壊れた携帯からストラップを外し、もとの――本当の私の携帯にそれを付け替えてくれた。
「何も間違わずに、一度も誤解することなく人生を歩める人なんているのかしらね?」
「え……?」
「きっと、そんな人はいないんじゃないかしら。もしいたとしても、そんな人生は小さくて狭くてつまらないものだと思うわ。間違いを犯すから人間で、間違いを認められるから、改められるから人間なのよ。せっかく考える能力や思っていることを伝える言語能力がある生き物なんだから、もっと有効活用しなくちゃ」
 お母さん独特の言い回しは今の私には少し難しい。
 本当は頭が飽和状態とかそういうわけではなく、ただ考えたくないだけかもしれない。
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