光のもとでⅠ
 ただ、「目を開ける」という動作をした記憶がない。
「目が覚める」という感覚がなかった。
 急に目の前に部屋が映った。人が映った。そんな認識。
「リ、ィ……?」
 唯兄がひどく驚いたような顔をしていた。
 どうしてそんな顔をされるのかが私にはわからない。
 私、また倒れたのかな。
 だから記憶が曖昧なのかな……。
「唯兄……」
 口にした声は掠れていた。
「おかえり……」
 言われて不思議に思う。
 私はゲストルームにいて、「おかえり」を言われる状況ではないから。
 それに、目が覚めても誰も呼びに行かないことからすると、私は倒れたわけではないのかもしれない。
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