光のもとでⅠ
「大事なもの、無事で良かったね」
「はい……。先輩、風邪ひきませんでしたか?」
 尋ねると、クスクスと笑う。
「あんなの大したことないよ。うちの道場、真冬の寒いさなかに寒稽古やるし」
 ウシシ、と笑うと、
「司はリビングにいるから。じゃ、あとは頼んだよ」
 と、玄関を出ていった。

 重いドアが閉まり、その場がしんとする。
 ドアに背を向けると、私の前にはリビングに通じているであろう廊下しかなかった。
 玄関と廊下は照明が点いているものの、その先は暗い。
 カーテンもきっちりと閉められているのだろう。
 廊下の先には明かりと思しきものは何ひとつなかった。
 まるで暗闇に伸びる通路のよう。
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