光のもとでⅠ
「ツカサ、そっちに行っちゃだめかなっ?」
「来ないで」
 即答だった。でも――。
「……ごめんっ。そっちに行く。顔を見て話したいからっ」
 急に立ち上がったらいけないとか、こんなときに考えられる人がいるなら紹介してほしい。
 だって、目の前にこんな状況があったらそんなの無理。
 顔を見ないとどんな思いでその言葉を口にしているのかわからないもの。
 ツカサが今、どんな顔をしているのかが知りたかった。
 怖いけど、知りたかった。
 暗がりの中で想像する。
 大きく踏み出せば五歩でツカサの正面にたどりつけるだろう。
 最初の三歩は暗いなりにも視界はクリアだった。
 残りの二歩は時間差でやってきた眩暈のため、視界がきかなかった。
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