光のもとでⅠ
「かばん持たせてもらえなかったし、何よりもツカサのお財布がここにある」
 黒い皮製のお財布を両手で持ち、車の窓辺に置いて見せる。と、車内の三人は揃って「確信犯」と口にした。
「でも……何? 翠葉ちゃんは司とふたりでバス登校嫌なの?」
「嫌、というか……」
 私は久先輩のかばんを持って下りたら、その足で車に乗って帰るつもりでいた。
 きっと蒼兄たちもそのつもりでいただろう。
「クゥ……今日さ、リィ、一睡もしてないんだよねぇぇぇっ」
 口元を引きつらせた唯兄が、久先輩の頭を両手でぐりぐりする。
「えっ!? そうだったのっ!?」
「そーなんですぅっ。さっきっから不整脈連発してんのっ」
「いた、いだだだだっっっ」
 まるでコントのようなふたりを見つつ、自分の胸に手を添える。
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