光のもとでⅠ
「四十一度かぁ……。翠葉ちゃん、それじゃつらいだろうな。発症してからどのくらい経ってたの? ――そうなんだよね。あの子常に微熱っ子だからどの時点からの発熱が発症になるのかわかりかねるんだよね。――薬、すぐに効くといいけど……」
 す、い……?
 思わず、俺は兄さんの部屋に足を踏み入れる。
「あ、司。――うん、今帰ってきたみたい。――わかった。母さんには俺から言っておく。じゃ、姉さんもうつらないように気をつけて」
 そう言うと、兄さんは通話を切った。
「兄さん、翠が何……?」
 会話の内容は聞こえていたし理解もしている。
 それでも俺は訊かずにはいられなかった。
 四十一度という体温が聞き間違いであることを願う。
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