光のもとでⅠ
「玄関入って右側の部屋は片付いてる」
「ありがと」
 俺はその部屋に入り、正面の壁を見つめる。
 ほぼ正方形に近いその部屋は――この部屋の向こうは翠が使っている部屋だ。
 でも、今そこに翠はいない。
 翠がいるのは病院……。
 紅葉祭でウィルスをもらったのか、それとも、ボックスの空気の悪い密集した空間でもらった?
 もっと早くに帰ってくるべきだっただろうか。
 それとも、御園生さんたちに連絡を入れて迎えにきてもらうべきだっただろうか。
 それとも――。
「最初から打ち上げなんて行かせなければ――」
 そう口にしたとき、コツ、と頭を小突かれた。
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