光のもとでⅠ
 帰りのホームルームを終えると二階へ下りた。
 無論、翠に会うため。
 教室の後ろのドアを開けると、俺に気づいた人間がすぐ翠に声をかけた。
 紅葉祭以来、周囲の視線は明らかに変わった。
 哀れみの視線を向けられることが多々。
 つまり、翠に片思いしている男、イコール俺。
 利点が全くないわけじゃないから別にいいけど……。
 翠は俺に気づくなり、プリントを落としあたふたとする。
 そんな翠に簾条が声をかけると、翠はぎこちない動きで廊下へ出てきた。
 九日ぶりに会う翠は若干痩せただろうか、という程度。
 もともと細いだけに大きな変化は見て取れない。
 顔色を見れるかと思ったが、それはマスクに妨害され、目元しか見ることはできなかった。
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