光のもとでⅠ
「どうもこうも……結婚て重いです。私には無理……。人の支えがないと普通に生活すらできないのに、誰かの支えになるなんて無理――無理……」
「でも、親は自分より先に老いるけど?」
 司先輩の低い静かな声は的確に核心を突いてくる。
 顔を上げると先輩の涼やかな目と視線が交わる。
「そうですよね……。いつまでも両親に頼っていられるわけでもない。だから、いつかは自立しなくちゃ……」
 不安の波に心が呑まれてしまいそうだった。すると、
「はいっ、ふたりともそこまで!」
 と、栞さんの声に遮られた。
「翠葉ちゃん、そんなに先のことを今から考える必要もないわ。司くんも、先を見据えるのはいいことだけれど、あまり先を見すぎても良くないわ」
 なんとなく嫌な感じの空気。
 やっぱり、ちゃんと考えなくてはいけない。今は高校に入学したばかりといえど、卒業するまでにはもう三年間を切っているのだ。
 その間に高校の先のことを考えなくてはいけない。
 私にとっての三年間という時間はひどく長いもののようにも思えるけれど、このことを考え出すと時計の秒針の音すらが気になる。
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