光のもとでⅠ
 そのことを伝えると、彼女はわかりやすく動揺した。
 髪を揺らすほどの勢いで俺を見上げる。
「……ここに来るのはそんなに来づらかった?」
 これはいじめすぎかな?
「そんなに困らないで? ほら、お茶が冷める前に飲もう」
 俺は彼女の背に手を添え、椅子に座らせる。
 椅子に座るのにワンクッションあった気がするけど、ひとつひとつの動作がゆっくりな彼女のことだ。なんら不思議なことでもない。
 俺が向かいに座ると、彼女は「いただきます」とカップに口をつけた。
 ハーブの香りを堪能するように、鼻からゆっくりと湯気を吸い込む仕草が好き。
 慣れ親しんだ香りにほっとするのか、優しく穏やかに表情が緩む。
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