光のもとでⅠ
 けど――君はつらそうな顔をするんだね。
 俺は彼女の手を放し声をかけた。
「翠葉ちゃん、もうゴクゴク飲める温度だと思うよ」
 彼女は俺の声に反応して顔を上げ、気まずそうにカップを何度か口に運びお茶を飲み干した。
「ごちそうさまでした」
「カップはそのままで」
 彼女の手からカップを奪い、自分のカップと並べた。
 白い陶器のカップに耐熱ガラスのカップ。
 素材が違うだけなのに、異質なものがふたつ並んで見える。
 一緒にいるのにアンバランス。
 まるで、俺と翠葉ちゃんみたいだね――。
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