光のもとでⅠ

09

 先輩の手は蒼兄の手より少し小さくて、私の手よりは大きい。そんな大きさ。
 そして、以前感じたとおり、ほんの少しゴツゴツしているように思う。
 それでも指は長く、全体的なバランスが整っていてとてもきれいな手。
 その手を自分の両手を使って少しずつほぐしていく。
「……弓道やってるからかな?」
「は?」
「あ……家族の手とは違う手だな、と思って」
「あぁ、そういうこと……。確かに弓を引くときにはそれなりに力使うから」
 部活のあとに私のマッサージなんて、疲れないのだろうか……。
 ……あれ? でも、今日の時間だと……。八限だった場合、ホームルームが終わって少ししたら帰ってきた、というような時間帯ではなかっただろうか。
「先輩、今日部活に出ましたか?」
「いや、行ってない」
「……マッサージのために?」
「それもあるけど、ほかにも用があったから」
 ほかにも用……。それはいったいなんだろう。
 どうしてか、マッサージをするために帰ってきてくれたような気がする。
 それはさすがに申し訳ないんだけどな……。
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