光のもとでⅠ
「これは俺の問題だから、翠葉ちゃんが気にする必要はないよ。だから、そんな顔しないで?」
 マスクをしていることから表情のすべては読み取れない。
 それでも、目を見ればどんな表情をしているのかくらい察しはつく。
「……どうしたのかな? 何かつらいことでもある?」
「な、い……です」
「君は本当に嘘をつくのが下手だね」
 俺にこんな質問をしなくちゃいけなくなるような何かはあったはずだし、いつも以上に目が潤んでいることは間違いない。
 それに、喉から搾り出すように発したその声……。
 俺はジャケットからハンカチを取り出し彼女の手に握らせた。
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