光のもとでⅠ
「必要なら使って?」
「私っ、泣いてなんて――」
 またしても反射的な反応を見せる。
 こちらを向いた顔は、悲愴そうに眉がひそめられていた。
「うん。まだ涙は零れてないけど、今にも零れそうだよ」
「っ……」
「それに、これがあればまた翠葉ちゃんに会う口実ができるでしょ?」
 そう言うと、彼女と一瞬だけ目が合った。
 ほんの一瞬だけ……。
 そのあと、彼女は車のドアを開け、逃げるように院内に向かって走り出した。
 俺はその姿を目で追うことしかできない。
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