光のもとでⅠ
「……頼むから、院内に入ったら歩いてくれ」
 そう願いながら車を発進させる。
 運転をしながら携帯の設定を音声モードに変えて助手席に放った。
 発信音のようなそれに耳を傾ける。
 心拍はいつもよりも速いものの、不整脈を知らせるアラートは鳴らなかった。

 図書棟へ戻ったとき、そこには誰もいなかった。
 紅葉祭の仕上げに学校印が押され、戻ってきた時点で終わったようなものだ。
 そのあと何かあるとしても、次期会長と副会長の後任がはっきりする程度。
 次の会長は司。そして、副会長には美都が就くはず。
 そんなことを頭の片隅で考えつつ、彼女の異変について考察する。
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