光のもとでⅠ
「ただいま――ってその包帯、何?」
 テーブルの上に置かれた包帯を蒼兄は指差した。
 栞さんと司先輩の視線が私に集り、必然と蒼兄の視線も私を向いた。
 蒼兄に話すのが一番恐怖だ……。
「……えぇと、あのね、これを隠していたの」
 と、手っ取り早く首の後ろを見せた。
「っ!? その傷どうした!?」
「……自分で引っ掻いてしまったみたい」
「……なんで」
 一から説明しなくてはいけないと思うものの、どうしてか話すことが異様に億劫だった。
 意識してやったことならともかく、気づいたときにはこうなっていただけに……。
 うな垂れている私を見て察したのか、栞さんが代わりに説明してくれた。
 だめだな……。私、結局は人を頼ってる。
「蒼くん、あくまでの無意識の行動だったのよ。お風呂でね、ボディタオルで真っ赤になるほど擦っているのを私が発見して止めたの。そのときはただの内出血だったのだけど、そのと、寝ている間に掻き毟っちゃったみたいでね……。美波さんが気づいたときにはその状態だったの」
 言葉に詰まった蒼兄に、後ろから抱きしめられる。
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