光のもとでⅠ
「翠葉、そんなに苦痛なら先輩と付き合うのをやめてもいいんだぞ?」
 小声でそう言われた。
「もうね、よくわからないの……。好きだとは思うの。でも、やっぱり今の私には身体と学校がすべてみたいで、どうしたらいいのかわからないの……」
「幸倉に帰るか……?」
「でも、そうしたら学校に通える自信がないの……」
 全部私のわがまま。
「わがまま言ってるの自覚してる。でも、学校は二度と諦めたくないの」
 口にして涙が出てきた。
 一度は簡単に諦めてしまったものだから。そして今は、手放したくないと思うもののひとつだから。
 だからわがままでもなんでも手放したくはない。
「秋斗さん、出張でしばらく帰ってこられないんだって。その間は若槻さんが秋斗さんのお部屋に泊まるって言ってた。だからね、若槻さんにたくさん相談に乗ってもらう。で、秋斗さんが帰ってきたら、きちんと自分でお話するよ。……それまでは蒼兄に相談してもいい? お話聞いてくれる?」
「……聞くよ。そんなの当たり前」
「……ありがとう」
 そこに思いがけない声が割込んだ。
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