光のもとでⅠ
「俺は……?」
 司先輩の声だった。
 びっくりしたけど……でも、この人はだめ。
「先輩はいつも優しいからだめです。意地悪だけど、根本が優しくて、なんだかんだ言っても私に優しいことしか言わないからだめ。私を厳しく諭してくれる人じゃないと相談できません」
 少しだけ笑みを添えて答えると、先輩の口もとが少し歪んで苦笑いになった。
「ようやくわかったか……。俺は翠には甘いって何度もいっているのに、全然気づかなかったくせに」
 思い返してみれば本当に何度も言われていたわけで、少し肩身が狭くなる思いだ。
「時間はかかったけど、気づけた、ということで怒らないでください」
「怒りはしない。でも、相変わらず鈍感だなとは思う」
 しばらくすると先輩は立ち上がり、
「じゃ、今日はもう帰るから。明日、海斗や簾条たちが来るって言ってた」
 と、言い残して玄関へを歩きだす。
 蒼兄に支えられて立ち上がり、玄関まで見送りにいった。
 先輩はかばんを手にしてドアを少し開けると、
「翠はなんだかんだ言って強いよな」
 と、振り返った。
「……栞さん、ご馳走様でした」
 先輩の背を見送りながら思う。
 先輩、私は強くなんかないです。
 ただ、周りの人に恵まれているだけなの。支えてくれる人がいるから立っていられるだけ。
 ただ、それだけなの――。
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