光のもとでⅠ
先輩が帰ると、栞さんは蒼兄の夕飯の支度をしてくれ、その片付けが終わると、
「蒼くんにお願いがあるの」
と、言い出した。
栞さんの手には二枚のフェイスタオルとマジックテープで止められるタイプのリストバンドがあった。
「翠葉ちゃんが寝る前にタオルで手をくるんで留めてほしいの」
「こんな感じにね」
と、左手をお手本のように巻いてくれた。
それはどうやっても自分の五本の指が自由にはならない感じで、たとえ、首に手を伸ばしてもタオルがシートの上を滑ってしまうような状態だった。
「こんなことしなくちゃいけないくらいなんですか?」
蒼兄の声は悲痛に満ちていた。
「本人が意識しているわけじゃないから、寝ている間が一番危ないのよ。傷が治るまでは続けてほしいわ」
「……わかりました」
蒼兄は口を真一文字に閉じた。
栞さんを見送り、蒼兄とふたり私の使っている部屋に入る。
……怒られるのかな。それとも、何を言われるのだろう。
蒼兄は黙々と左手のタオルを外してくれている。
外し終わると顔を上げ、
「翠葉、一緒に寝るか?」
と、訊かれた。
「蒼くんにお願いがあるの」
と、言い出した。
栞さんの手には二枚のフェイスタオルとマジックテープで止められるタイプのリストバンドがあった。
「翠葉ちゃんが寝る前にタオルで手をくるんで留めてほしいの」
「こんな感じにね」
と、左手をお手本のように巻いてくれた。
それはどうやっても自分の五本の指が自由にはならない感じで、たとえ、首に手を伸ばしてもタオルがシートの上を滑ってしまうような状態だった。
「こんなことしなくちゃいけないくらいなんですか?」
蒼兄の声は悲痛に満ちていた。
「本人が意識しているわけじゃないから、寝ている間が一番危ないのよ。傷が治るまでは続けてほしいわ」
「……わかりました」
蒼兄は口を真一文字に閉じた。
栞さんを見送り、蒼兄とふたり私の使っている部屋に入る。
……怒られるのかな。それとも、何を言われるのだろう。
蒼兄は黙々と左手のタオルを外してくれている。
外し終わると顔を上げ、
「翠葉、一緒に寝るか?」
と、訊かれた。