光のもとでⅠ
『リィ? ご飯食べられた?』
 翠を「リィ」と呼ぶ人間はひとりしかいない。
 風が強く吹く中でも不思議とその声はよく聞こえた。
「唯兄……そんな大きな声で話さなくても聞こえるよ」
 電話の相手とは反対に、翠は声を潜めて話す。
『え? なーにーーー!? そこ、外? リィの声より風の音がすごいんだけど?』
 翠が一瞬耳から携帯を遠ざけるほどには大きな声だった。
『胃の調子は? お弁当食べられた?』
 胃……? 弁当って……。
 体調が悪いのにこんな寒いところで電話してたのか?
 何を考えているんだか……。
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