光のもとでⅠ
 あんたとその妹が言わせてるんだろ……。
 なんて、ストレートには言わない。
 できるだけ遠まわしに、嫌みたらしく言ってやる。
「最近自信喪失気味なんです。情けないことに、ものの見事に避けられまくっているもので」
 今、俺の表情は「絶対零度の笑顔」と言われるそれなのだろう。
 そんなことを考えつつ、目の前の薄っぺらい壁を越えるために言葉を続ける。
「だから、翠本人に確認しに来たんですが……?」
「なるほど。状況は理解した。でも、ごめん。やっぱ帰って?」
「今の話の流れでどうしたらそういう返答になるのかご説明いただけますか?」
「説明するの面倒」
「理解に苦しむ」
「別に理解してくれなくていいよ?」
「薄っぺらい」と思っていた壁は存外薄くはなかった。
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