光のもとでⅠ
 母さんは俺の返事に満足そうな笑顔になり、思い出したように口にした。
「そういえば、明日はキャンセルになったのよね?」
「……昨日、翠がひとりで来たって?」
「そうなの。そのとき、自分の都合ですみません、って謝っていたから、日曜日に予定がはいったのかしら、と思ったのだけど……違うの?」
「俺は何も聞いてない」
「あら……」
 明日のことに関して説明できるほどの情報を持っていないだけに、何やら罰が悪い。
 その沈黙を破ったのはハナだった。
 華奢な前足を俺の足へかけ、後ろ足二本で立っている。
 姿は愛らしいくせに、目は高慢そのもの。
 これは、「かまえ」と言っているに違いない。
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