光のもとでⅠ
 祖母の墓参りは欠かさないが、墓は別の区画にあるため、散策ルートへはめったに来ない。
 前に来たのがいつだったかを覚えていないくらいには来ていなかった。
「小さい頃はここが遊び場だったな……」
 歩調を改め、周りの景色に意識を戻す。
 赤く紅葉している葉もあれば、まだ緑から黄色に変化を始めたばかりの葉もある。
 久しぶりに色濃く思い出した祖母は、一瞬で俺を冷静にしてくれた。
 今日、ここへ来たのはじーさんに立ち入り許可を得るため。
 そして、紅葉の見所を確認するため――。
 翠をここに誘ったのは単なる口実だった。
 翠と会うための、翠とふたりで過ごす時間を得るための……。
 でも、翠は違うだろう。
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