光のもとでⅠ
 きっと、純粋に紅葉を見たいと思ったに違いない。
 藤山は学校からも病院からも見える。
 翠の視界には必然と入るものだったはず。
 俺は紅葉なんてどうでもよくて、ただ、翠が喜んでくれればそれでいいと思っていた。
「それがどうしてこんなことになっているんだか……」
 翠からの連絡はまだない。
 会わないにしても、連絡なくすっぽかすということができる人間ではない。
 だとしたら、連絡が来るのは今日の夜か――。
 俺は藤棚の下にあるベンチに腰掛ける。
 この藤棚は五本の藤の木で作られている。
 俺たちが生まれるたびに祖父母が一株ずつ増やし育ててくれたもの。
 今ではずいぶんと大きくなったものだ。
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