光のもとでⅠ
「それに、前ならすぐに諦める道を選んだけれど、今は学校に通うこと、それが優先事項なんだろう?」
 コクリと頷くと、
「それだけでも大きな前進だよ。諦めて家に篭ることを選ぶよりも大変なことだ。わがままじゃないよ」
 力強く言われると、どこかほっとした気持ちになった。
「普通はさ、学校に通うことなんて誰もが当たり前に思ってるんだ。それが当たり前じゃなくなったとき、その人たちはものすごい衝撃を受けると思う。翠葉はそれを乗り越えようとしてるんだよ。それだけの力が翠葉にはあるんだ」
 ……そんなこと、考えてみもしなかった。
「翠葉は自分が弱いって思っているよりも、強い部分はすごく強いんだ。それを司はわかっているから帰り際にああいう言葉を言ったんじゃないかな」
 司先輩の言葉……? ――あ。
――『翠はなんだかんだ言って強いよな』。
 私は強くなんかないと思ったけれど、でも、そういう面で私を強いと言ってくれるの? 思ってくれるの?
 ……私にも強い一面があるの?
 そんなことを考えていると、蒼兄に寝る前の薬を渡されて飲んだ。
 あとのことはほとんど覚えていない。
 蒼兄が何時までレポートを作成していたのとか、朝何時にランニングに出かけたのかとか……。
 目を覚ますまでは一切気づかなかった。
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