光のもとでⅠ
「明日、ここに入る許可をもらいに来た」
「……翠葉ちゃんと、か」
 秋兄は俺の向かいにあるベンチに座り、どこか苦々しく、けれど含みある笑みを見せる。
 俺は身体を起こしベンチに座りなおした。
「俺も、デートって言える初めてのデートはここだった。……でもって、その日のうちに振られたわけなんだけど」
 最悪……。
「そういうの教えてくれなくていいから。……やなジンクスになりそう」
「ついでに、彼女が俺に初めて抱きついてくれたのもここ」
 聞きたくない……。
 翠が自分から抱きつくとか想像できないし、想像しようものならザラザラした感情に呑み込まれる。
< 7,850 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop