光のもとでⅠ
 だって、小説の中では別れたりまた付き合ったり、彼の親友を好きになったり――恋にはいろんな形があって目まぐるしいほどだった。
 でも、どの小説にも体の関係を匂わすものは出てきていた。
 私自身にまったく知識がなかったわけじゃない。
 けれど、それが自分の身に起きるとなると、話は別のようだ。
 どうしても"怖い"という思いが先に立ってしまう。
 みんなはどうやって乗り越えるんだろう……。
 私には断崖絶壁を登れと言われているのとそう変わらない。
 ぐるぐると考えているところに蒼兄が頭をわしわしと拭きながら入ってきた。
 上半身は裸。
 正視はできないけれど、まだ大丈夫。でも、これが秋斗さんや司先輩、海斗くんや佐野くんだったら、と考えると顔が熱くなって死にたいかもしれない。
「……なんて顔してるんだ?」
「いえ……免疫についてなんとなく」
 微妙すぎる答えを返してしまった。
「蒼兄、やっぱりお付き合いするのってとても大変なことに思える」
「……どうして?」
 言いながら、蒼兄はTシャツをすっぽりとかぶった。
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