光のもとでⅠ
「だって、彼氏は恋人で、恋人は婚約者で、婚約者は婚約で、婚約は結婚を前提にするお付き合いなのでしょう?」
 蒼兄の動きが固まった。じっと見つめていると数秒後に動作が再開される。
「翠葉ちゃん、話が飛躍しすぎなんだけど……その情報ソースはどこでしょう」
「……パソコンの検索」
「……なるほど。……今のご時世、別に付き合ったからって結婚するところまでたどり着ける人のほうが少ないと思うよ」
 言いながら、蒼兄はパソコンの検索に文字をカタカタと打ち込む。
「あ、本当に出てきた……。すごい話の飛躍」
 と、苦笑をもらす。
 蒼兄はこちらを向くと、
「ネットはさ、色んな情報を与えてくれるけど、それだけがすべてじゃないし、時には間違ってることもある。それは覚えておきな。周りの人に確認を取ることも忘れずに」
「……蒼兄、やっぱり性行為ってしなくちゃいけないものなのかな。秋斗さんが言った付き合うはそういう意味を含むの?」
 その言葉に蒼兄は再度フリーズした。
「翠葉……夕飯には唯が来る予定だから、そしたら三人で話しよう?」
 とりあえず、次の約束は提示してくれたけど、なんとなく思い切り逃げられた気分。
 やっぱり答えづらい質問だったのだろうか……。
 若槻さんか……。間は空いてないはずなのに、どうしてかもう一週間くらい会っていない気がした。
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