光のもとでⅠ
 それだけで十分だ。
 その頃、彼女が何に悩んでいたのか俺は知っている。
 彼女はじーさんの質問にゆっくりと答えを返す。
 自分ときちんと向き合い、間違った言葉を口にしないように、とても慎重に話しているように思えた。
『ふむ……欲しいものには手を伸ばせぬか』
 彼女は答えない。
『さくっと訊いてしまおうかの? 何に悩んでおるんじゃ?』
 直球過ぎる質問に俺が反応してしまう。
 だが、彼女はその質問に質問で答えた。
『……朗元さん、私は何に悩んでいるのでしょう?』
 そこからの会話はひどく胸に痛い内容だった。
 人の気持ちはどうして変わるのか、どうして変わったのかわからない。
 声を震わせ答えた彼女。
< 7,918 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop