光のもとでⅠ
 彼女は俺と司の間というよりは、自分の気持ちに困惑していたのだ。
 まるで、気持ちが変わってしまった自分を責めるような、そんな口ぶりだった。
 あぁ、この子は泣いている……。
 涙を流して、心からは血を流して泣いている。
 じーさんは実にうまい具合にパレスへ戻るように話を振った。
 彼女の返事は聞こえてこなかったが、じーさんの呟きで本館へ戻ってくることがわかる。
 彼女の側を離れたのか、俺たちに向けて通信が入った。
『これでよかろう。続きはお嬢さんがきちんとあたたまったあとじゃ』
 じーさんは、彼女がパレスへ戻ったらまずはお風呂に入って身体を温めることを従業員に命令して戻ってきた。

「司、それを出しておけ」
 じーさんに言われた司はテーブルの上にある風呂敷包みから木箱を取り出す。
 桐でできた木箱はおわんが入るくらいの大きさ。
< 7,919 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop