光のもとでⅠ
「何それ」
 訊くと、じーさんは蓋を取って見せてくれた。
「前に会うたときに約束しておっての。おまえたちがお嬢さんを一向に連れてこぬから渡す機会がなかったんじゃ」
 どこか責めるような物言いだった。
 そして、俺と司は気づかぬ振りをして無視を決め込む。
「狸どもめ……」
 そうは言うけど、じーさん以上の狸はいないと思う。
 たぶん、この見解は司も同じだろう。

 じーさんと彼女はしばらくしてからレストランで落ち合った。
 最初はじーさんのカップに驚いていた彼女だが、じーさんが話をもとへ戻そうとすると、それを遮り自分から話し始めた。
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