光のもとでⅠ
『最初から偶数になることを望まなければいい。ただ、それだけです』
 すでに決めたこと、とでもいうかのように凛とした声だった。
『……ふむ。極論じゃが、理論的には成立するのぉ。だから手を取らぬ、か』
『はい……。ふたりとも、とても……とても大切な人なんです。恋愛感情でひとりを選んでひとりを失うなんてできないくらいに』
『……お嬢さんは自分の気持ちを殺すつもりかの?』
『いえ、私は選んだだけです。自分の気持ちを殺すとかそういうことではなくて、どちらも手放したくないという選択をしました。これは、何も……誰も失わないための選択です』
 悪い、と思いつつ、その言葉に救われてしまう俺はいったいなんなのだろう。
 自分の中で相反する感情に絞め殺されてしまいそうだった。
< 7,924 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop