光のもとでⅠ
「じーさんが彼女に接触するのは森になる」
 森……?
「……司、さっき外気温は何度と言っておったかの?」
「一度」
 俺は車の中で聞いた気温を答えた。
 じーさんは窓の外、空を見ながら口にする。
「あのお嬢さんはそんなところへなぜ行こうと思うのかのぉ……」
 俺はいつもの調子で毒を吐く。
「さぁ、自分をいじめるのが趣味なんじゃない?」
 こんなところまで来て、この寒さの中森へ行こうなど――。
 どれだけ自分を追い詰めれば気が済むんだか……。
 一発殴って治るものならその役を自分が引き受けてもかまわないんだけど……。
< 7,930 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop