光のもとでⅠ
「……しょうがないのぉ、わかったわ」
 じーさんは口髭をいじりながら窓の外に視線を戻した。
「雪が降ってきそうな空模様じゃの……」
 話の成り行きを見守っていた藤原さんが動く。
「会長、予防的にお薬をお飲みください」
「そうするかの」
「吸入器は?」
 俺が訊くとじーさんは煩わしそうに
「持っておるわ」
「ならいいけど……」
 パレスにはじーさんの発作に供えた医療設備が併設されている。
 何があったとしても藤原さんがいれば大事には至らない。
 そんな保険を再度認識することで俺は気持ちを落ち着けた。
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