光のもとでⅠ
「気持ちを伝えるためってことは紅葉祭二日目か……」
「そう……」
「いや、本当……なんていうか、まいったな……。自分のことをどれだけ責めても、どれだけ彼女の幸せを願っていても、そんな出来事を訊くだけで嫉妬するって言ったら笑う?」
 秋兄は苦笑を浮かべた。
 取り繕っている表情じゃない……。
「……いや、俺も普通にむかつくと思うし」
「そっか……。これって普通の感情なんだ」
 秋兄はどこか確認するように、または納得したように口にした。
 そのとき気づいたんだ。
 俺も秋兄も初恋で、「恋」というものにどんな感情を抱くことすら知らないんだ、と。
< 7,946 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop